漆について

 ルードヴィッヒを導入していただいたお客様より「漆塗装」の依頼があり、会津の漆工房が軒を連ねる工業団地に出向いた。すでに雑誌の取材を受けたフロントロード箱は九州で「漆塗装」をほどこしており、HPにもその画像を使っている。都内から湘南に移ってから東北道は縁遠くなってしまい、会津は6年ぶりである。
 会津は大好きな街で海外でホテル暮らしをしていた1970~2000年代の20数年余は多いときは毎月、少ないときで3ヶ月に一度は訪れていた。海外のホテル暮らしは快適で不便はなかったが、大好きな「そば」「温泉」はなかった。オーディオも然りだが好きなものが手に入らないのはつらく、なんやかんやと用事をこしらえては短期帰国をした。出張を利用して北海道から九州まで著名な温泉はほとんど訪ねてみたが、回数を重ねる内に宿の良し悪しが分かるようになり、いつしか東北が中心となった。ここ十数年は成田空港からそのまま高速にのり会津坂下まで走り、そばは柳津あるいは金山町、宿は只見川沿いの早戸温泉「竹のや」と決まった。ここの料理はおいしさに群を抜いていたからである。都内の一回のご接待で一月分の枠がふっとぶ懐石など足元に及ばない「本物の」料理がここにはあった。食材はすべて奥会津でとれた地物、おやじさんが採ってくる山菜、春先は雪の中から掘ってくる山うど、高山の急斜面一杯にでてくるこごめ、タラノ芽、沼沢湖で釣ってくるヒメマスの炭火焼、抱卵した只見川の鯉の輪切りの佃煮、山から採ってくる本物のキノコ、(農家が自分で食べるために作った)地元のお米、酒は栄川(一般販売用でなく常連用の蔵出し)、なによりも本物の味覚をもつ食材で育った料理の達人の品々。当の昔にリタイアしてスピーカー作りの変人になった現在でも、海外の友人たちが時折来日して費用先方もちで箱根の強羅環翠楼や俵石閣など「高級」といわれている宿にも泊るが、その箱根の宿代の三分の一以下の「竹のや」料理の足元にも及ばない。陛下が滞在された際の写真がうやうやしくかざってあるが、昔はまともな料理が出されていたということか。悲しい限りである。
 閑話休題
 会津の漆の職人と打ち合わせた。「漆塗装」といわれているものには、建築用、家具用、工芸用とまったく異なる3つのカテゴリーがあると。私やルードビッヒご購入のお客様の求めているものは「工芸用」の本物であった。
 建築用、家具用がニセモノといっている訳ではない。それぞれ用途がある。その詳しい知識もなく家具用の工場に発注してしまった私のミスであった。オーディオに「本物」を求めつづけていたにもかかわらず、塗装の勉強を怠っていた、反省・・反省である。
 お客様よりは「溜」のご注文だったが、持参したバッフルでは溜めは出来ないことが分かった。無垢材で接いであるので湿度変化により木が呼吸する際、溜では木肌の凹凸が出てしまう。そこで拭きうるしで木肌に漆を含浸して丈夫な層を作り、さらに拭いてしあげる方法を取ることになった。
 ともあれ「本物の漆」を注文する段取りを整えて帰った。7月末までには完成する予定なので「本物の漆」で固めたバッフルでどのようにフィールドが「鳴る」か、改めてレポートしたい。




   
カテゴリ
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR